翌日、神谷先生が社会科資料室前の階段から落ちたニュースは、花里中を駆け巡った。
 病院で、右足骨折と診断されたらしい事も。

 帰りのホームルームが終わると、皆もざわついていた。

 明るい先生なので、心配する生徒さんも多かった。
 雛さんも結構お気に入りだったみたいで、珍しく目頭を押さえていた。

「神谷先生には、お見舞いに行けないのですか?」

 心配で、どうにもソワソワするので、自分から言い出してみた。
 積極的に、看病だってしたい。

「ちょっとね。六人部屋だから、押し掛けると迷惑になると思うわよ。控えなさい」
 担任の重松風花(しげまつふうか)先生から聞かされた。

「退院は、いつになりますか?」
「まだ、分からないみたいよ」

「いつも、資料室の整理は任されているのに! 何で、昨日の事で気まずい位の理由で、行かなかったの?」

 自分のせいだと責める。
 ごめんなさい、神谷先生……。

 それから、空気が少し変わった。

 社会の授業は、国語の成田先生が受け持つ事となった。
 成田先生には、ご迷惑を掛けたし、できる先生だと思って、頭が上がらなかった。

「神谷先生、無事に帰って来てください」

 本気で祈り続けた。