今日は、松組三班の掃除当番だった。
 最後に掃除用具をしまう。

「掃除終わったー」
 んーと伸びをする。

「礼音、帰るー?」
「うん、雛(ひな)さん、ちょっとお待ちよ。六十秒で支度するぞ」

 礼音は、花里中の文芸部に在籍していたけれど、じゃんけんで負けて、文芸部になっただけである。
 殆ど帰宅部であった。
 顧問の成ばあが苦手で仕方がない。
 
 とことことことこ……。

 雛ちゃんとは、家の方角が近いので、毎日の様に仲良く帰る。

「礼音、私に隠している事ない?」
「ええ? 特にないなあ……。なんで?」

「最近、よく顔を赤らめているよ。好きな人でも――」

「――わー。できません。いません。何言っているの?」
 顔の前で手をいやいやと振った。

「うちの明(めい)達イジメグループいんじゃん。目をつけられているよ」
「げっ。なんてマセタ人達!」

「おマセさんは、礼音じゃん」
「あああ! 何でもないです。本当」
 頭を抱えた。

「てーれちゃって」
 パシンと背中を叩かれた。

 あははは。

「惚れた理由?」
「うん」

「ひょうひょうとしているし、授業でも斜に構えている所がいいの。ふふーん。それから、余談がすっごく面白いんだもん」
 口を手で覆って嬉しそうである。

「じゃ、又、明日ー」
「明日ねー」