真夏の青空、さかさまにして

言い直されたごめんには僕がここに向かわされたことに対しての謝罪ではなくて、泣いてしまってごめん、の意味が含まれているようだった。

僕はまさかの事態にどうすることもできなくて、ただただ真夏が泣いているのを見つめていた。



「な、泣き止んだ……ごめんねえ……っ」

「泣き止んでないじゃん……」



泣いている人間、ましてや女子なんて、普段の僕なら絶対に無視だ。だけどお世話になっている十和子さんに頼まれたからという責任感だけが、面倒だと思いながらもなんとか僕をこの場にとどまらせていた。



「……どうしたの」



ガラにもないセリフに鳥肌が立つ。でもこう言うしかないだろう。



「ううっ、あずさあ〜……」

「泣かないでよ！」



泣かれたら本当にどうしていいかわからない。だからとりあえず、泣き止んでほしい。話はそれからだ。



「うん……なきや、なきやむ……っ」



しかし真夏が泣き止もうとすればするほど涙は反比例してあふれ出すようだった。ひっくひっくとしゃくりあげる嗚咽混じりの声は悲しそうやら悔しそうやらで、一向に泣き止む気配がない。


そのうちにだんだんと僕は腹が立ってきた。泣き止めない真夏にも、どうしたらいいのかわからない僕自身にも。

どうしたらいいのかわからないってなんだよ。なんで僕が真夏に気を遣わなきゃいけないんだ。気持ち悪い。泣いてるからなんだって言うんだ。



「泣きやめよ」



ポケットからハンカチを取り出して、僕はそれを涙でぐしゃぐしゃになった真夏の顔に乱暴に押しつけた。真夏が「ぎゃっ」とブサイクな声を出す。