「それはいいですけど……」



真夏と二人というのは正直気が引けるけれど、この辺の土地勘がないのでしかたない。真夏一人で行けなんて言えるはずもないし。



「まるでずっと見てたみたいなタイミングですね」

「あら、だってずっと見てたもの。仲良しねえ~」

「ええ、どこが……」

「そうそう!仲良しなんだよ!ねっ」



どこがですか、と反論しようとした僕を、最後まで言わせまいと丸め込むようにして真夏が同意を求めてきた。

散々あーだこーだ言われておいてよく言う。傍から見れば、仲良しというよりもいじめられていたというほうがしっくりくるんじゃないだろうか。


僕は否定も肯定もせず、「で、なにを買いに行けばいいんですか」と話題を元に戻した。十和子さんがにこりと笑う。



「遅くなっちゃったけど、あずさくんの歓迎会をしようと思うの。それで今日の晩ごはんはバーベキューにするから、お肉を買ってきてくれないかしら」

「歓迎会、ですか……?」

「あら、乗り気じゃない?」

「いえ、ただそんな、気を遣ってもらわなくても……」



歓迎会とか誕生日会とかそいうのには無縁だったから、どういう反応をするのが正解なのかわからない。

すると真夏がぽんっと僕の背中を軽くたたいた。



「ちがうよー、気を遣ってるんじゃなくてわたしたちがしたいからするんです」



「残念でしたー」と真夏がいたずらっぽく笑うと、それに続いて十和子さんも「そうよー」と間延びした穏やかな声で言う。僕はそれがなんだか気恥ずかしくて、「……ありがとうございます」と尻すぼみに返事をした。