少しすると関谷が戻ってくる。

「井上の荷物が無いんだ。もしかしたら電車で先に帰ったのかも。」

えみは一瞬時が止まったような感覚を覚えた。

『私のせいだ。』

「えみ?」

動揺しているえみの様子を見て、あずさがそっと話し掛ける。

「あの、私も今から電車で帰るね。」

えみは、居ても立っても居られない様子で荷物も持たないまま駅の方へ向かおうとする。

「ちょっと待ってえみ!」

あずさがえみの腕を掴んで少し強めの口調で言う。

「もう終電行っちゃったはずだよ。今日はもう遅いから、明日の朝、関谷くんの車で早めに帰ろう?」

あずさはえみをなだめるように言う。



「うん。」

えみは、あずさの言葉に力無く返事をする。


あずさとえみは、一緒に部屋へと戻り寝支度を始めた。

『井上くん』

ベッドに入ってからも、えみは眠れずに井上のことを考え続けた。