繋がる〜月の石の奇跡〜

えみが自分の部屋に戻ると、あずさがせっせと掃除を始めていた。

「えみ!どこ行ってたの〜!掃除やるよ!」

あずさは、はたきで埃を払いながらえみに話し掛ける。

えみは、あずさの言葉にも無反応でその場に座り込んだ。

「え?どうしたの!?」

はたきを放り出して、あずさがえみの側に近づいて肩を支える。

「あのね、井上くんのことお祭りに誘った。」

ボーッとしながらえみが答える。

「えー!!それで、井上くんは何て?」

あずさが興奮気味に聞く。

「一緒に行こうって言ってくれた。」

変わらない様子でえみは言った。

「やったじゃーん!」

あずさはえみの両手を持って、嬉しそうに上下に振る。

井上をお祭りに誘った自分や、井上とお祭りに行けることになった状況に今でもピンときていないえみは、気持ちを処理し切れずにボケっとしている。

するとあずさが突然立ち上がり、自分の荷物をガサガサとあさり始める。


「じゃーん!これ着て行こうよ!」

あずさがえみの目の前に2つの浴衣を出す。


「浴衣?」

「そう!どっちがいいか選べなくて2つ持って来ちゃったのー!えみに1つ貸してあげる!」

あずさは、嬉しそうにニコニコと話す。

「でも・・・。」

えみはもごもごと口ごもる。

「いいじゃん!いいじゃん!たくさん可愛くして、お祭り楽しもうよ!」

あずさは2つの浴衣を鏡の前で合わせながら、楽しそうにポーズを取る。

その姿を見て、えみも少しずつ楽しい気持ちになっていった。