繋がる〜月の石の奇跡〜

えみ、大谷、あずさの三人は食事の後片付けを始めた。

大谷は食器を洗い、えみが食器の水気を拭き取る作業をした。

大谷も少し緊張しているのか、二人の間に会話はなく、気まずい空気が流れた。

テーブルを拭いていたあずさは、二人の微妙な様子を察して、食堂からそっと出て行く。


「よし。食器洗い完了!」

無理やり大きな声を出して、大谷は妙な雰囲気を取り払おうとする。


「ありがとうございました。」

えみは布巾をたたみながら、小さくお辞儀をする。

「えみちゃんもありがとうね。」

大谷はいつものようにニコっと笑った。

「じゃぁ、広場にでも行く?」

「はい。」

大谷に気づかれないように、えみは深く呼吸をする。

広場に着くと、二人は一番端にあるベンチに座った。

話をなかなか切り出せないえみは、膝の上に置いた両手を落ち着きなく動かす。


「えみちゃん。話したいことって?」

もじもじしているえみを見て、大谷が優しく尋ねた。

「あの、えっと、、」

えみは息を飲み込み、意を決して話し始めた。

「私、今日のお祭り、大谷さんと一緒に行けません。すみません。」


大谷の反応を見ることが怖くて、えみは下を向いたままでいる。




「そっかぁ。分かった。」

大谷は残念そうながらも、どこか分かっていたように言った。



「誰か他のやつと行くの?」

申し訳なさそうにしているえみの方を見て大谷が問い掛ける。





「えっと、私、あの、、」

えみは返答に困って、どんどん小さな声になっていく。




「うそうそ。意地悪なこと聞いてごめんね。いいんだ。」

大谷は遠くを見つめながら優しく言った。


「じゃぁ、先に行くね。」

大谷は立ち上がって一本足を踏み出す。

「あ、そうだ。えみちゃん、悪いんだけど帰りは他の車で帰ってきてもらってもいいかな?実は明日の朝に急用が入っちゃって、今日の夜に帰ることにしたんだ。」

えみは下を見ていた顔を上げ、大谷の方を向く。

「本当にごめんね。あずさちゃんにも言っておいてくれる?」

そう言って大谷は足早にその場から立ち去った。





「フラれたのはこっちなのに。何気使ってんだか。」

大谷はため息をついてふっと困った笑みを浮かべた。