約30分後、えみの家のチャイムが鳴った。

えみは、急いで玄関へ向かいドアを開ける。

するとそこには、井上が立っていた。

「よお。」

「どうも。」

えみと井上は、お互いにぎこちない挨拶を交わした。

ドアの鍵を閉め、大谷が待つ車へと向かう。

これから何が起こるのかえみにはまだ分からなかった。

えみの姿が見えると、大谷が運転席の窓を開けて大きく手を振る。

「えみちゃん!」

えみは軽く会釈した。

車の近くまで来ると、井上がバックシートのドアを開けた。

「どうぞ。」

井上は一言そう言うと、えみの方を見た。

「あ、ありがとう。」

少し戸惑いながら、えみは車に乗り込んだ。

井上はドアを閉め、助手席に周り車に乗る。

「あれ〜。井上優しいじゃーん。」

からかうように大谷が井上に話しかける。

「俺って意外とできる奴なんですよ?」

ふざけたように井上が返した。

そのやり取りを見て、えみが笑い出す。

すると井上と大谷も笑い出した。

『今日の井上くんは、いつもよりも雰囲気が柔らかい。』

えみはそう感じ、懐かしいような気持ちになっていた。