そして夜7時、えみはあずさよりも先にカフェに着きテラス席に座りあずさを待つ。

夜になると夜風が心地よく、テーブルに置かれたキャンドルの火がゆらゆらと揺れている。

約5分遅れであずさがお店に着く。

「遅れてごめん!」

「私も今着いたところだよ。」

二人はメニューを見ながら、楽しく会話する。

えみはこのお店のナポリタンが好きだったので、いつも通りにそれを注文した。
あずは今日はホウレンソウのクリームパスタを注文した。


料理がテーブルに運ばれ、えみとあずさの会話も盛り上がってきた頃、店の外から賑やかな声が聞こえてきた。

声のする方を見ると、大谷を含めて数名の学生がお店の中へと入ってきた。

「大谷さんだ!」

あずさが真っ先に気づき声を上げる。

えみは何となくソワソワした気持ちになり、大谷たちがいる方向とは別の方を見ながら水をゴクゴク飲む。

すると大谷たちのグループもテラス席へと案内されてきた。

「あれ!えみちゃん!」

えみに気づいた大谷が嬉しそうに近づいて来る。

えみは大谷の方を向いてぺこっと頭を下げる。

「こんなところで会うなんて奇遇だね!元気だった?」

大谷は友達にお構いなしに、えみとあずさのテーブルの一つ空いていた椅子へ座る。

「はい。今日でテストも終わったので。」

えみはまた水を一口飲む。

「そうなんだ〜!俺たちは明日で最後。早く夏休みになって欲しいよ〜。」

大谷は、あずさの方も見ながら楽しそうに話しを続ける。

「そーいえば、合宿のこと考えてくれた?」

思い出したように大谷がえみに尋ねる。

「あ、えっと。」

えみが返事に困っていると、あずさが不思議そうに聞いてきた。

「合宿って?」

「僕、バスケサークルに入ってるんだけど、来週から始まる夏の合宿にえみちゃんを誘ってるんだ。」


「えぇー!すっごく楽しそう。えみ絶対行った方がいいよ!」

あずさは目を輝かせながら言う。

「もしよかったら、お友達のあずさちゃん?も一緒にどう?」

大谷があずさのことも誘う。

「ええ!私もいいんですか?」

あずさが驚きと嬉しさで椅子から立ち上がって答えた。

「えみ、行くよね?」

えみの両手を掴んであずさが嬉しそうに言う。

話の展開についていけないえみは、あずさの勢いに圧倒されて思わず首を縦に振る。

「やったー!」

あずさは嬉しそうに両手を上げる。

『あずさも一緒なら、まぁいいか。』



「大谷!お前何食べる?」

少し離れたところから大谷の友達の声が聞こえてきた。

「あ、俺行かなくちゃ。それじゃ、詳細は明日にでも連絡するね。」

そう言うと、大谷は友達の元へと戻って行った。