「えみちゃん」










「今年のバスケサークルの合宿に参加してくれない?」








「へ?」
思っていたことと全く異なることを言われ、えみは気が抜けた返事をする。

「毎年夏にバスケサークルの合宿やっててさ〜。急だとは思ったんだけど、えみちゃん来てくれたら楽しくなりそうだな〜って。」

えみは、未だに気が抜けた状態でいる。

「合宿っていっても半分遊びみたいなもんなんだ。」

えみは、ハッと我に返り井上が話していた合宿の内容を思い出す。

「川で遊んだり、花火やお祭りに行ったりもするんですよね。」

とっさにそんな言葉が出てきた。


「あれ?合宿のこと誰かから聞いた?」

大谷が少し驚いて聞く。


「あ、はい。井上くんが。」

何となく井上の名前を言葉に出すのをためらいながらえみが答えた。

「そっか。あいつが合宿の話をね。」

大谷は意味深につぶやく。


「8月の第1週なんだけど、もう何か予定入っちゃってるかな?」


「えっと。まだちょっと予定が分からなくて。少し考えてもいいですか?」


「もちろん。ゆっくり考えてくれていいからさ。」

大谷はニコッと笑顔を作って答えた。


「それじゃ、そろそろ行こうか。」


二人はアパートへと向かって歩き出す。