大谷は、えみよりも先にラーメンを食べ終わる。

えみは、急いで麻婆丼を口へと運びもぐもぐと動かす。

その様子を大谷はニコニコと見つめる。

「ゆっくり食べなよ。」

大谷はそう言いながら、えみの顔をじっと見続ける。

「そんなに見られると食べにくいです。」

口をモゴモゴさせながらえみが答える。

「えみちゃんって小動物みたいで可愛い。見てて飽きない。」

大谷は終始笑顔でいる。

「それって褒めてるんですか?」

えみは呆れた感じで答えるも、大谷のペースにはまっていた。

えみも麻婆丼を食べ終え、お会計をしようと財布を取り出す。


「今日は僕の奢りね!」

大谷は、お金を取り出そうとしたえみの手ギュッと握る。

その力強い手の感覚に一瞬ドキッとして息を飲む。

「あ、ありがとうございます。」

思わずお礼の言葉が出た。


店長に挨拶をし、二人は店の外へと出る。


えみは申し訳なさそうに歩き始める。



「えみちゃん、僕を誰だと思ってるの?」

「え?」

えみはぽかんとする。

「将来有望な医学生だよ?」

格好つけて大谷が言う。


いつもオチャラケテいる大谷の格好つけた姿が面白くて、えみは笑ってしまった。

その様子を見て、大谷も微笑む。



「あー。何かアイス食べたくなっちゃったなー。」

大谷が両手を広げて、空に向かって大きな声で言う。

「じゃぁ、アイス奢りますよ。」

少し先を歩いてた大谷に近づきながら、えみは笑顔で言った。

アパートの近くのコンビニに寄り、大谷はチョコレート味、えみはストロベリー味のカップアイスを買った。

「えみちゃん、ちょっと公園寄って行こうよ。」

少し真剣な顔つきになって大谷が言った。

えみは、特に返事するわけでもなく大谷の後について行く。