えみは、少しの間玄関の前に立ち尽くす。
すると、えみの電話が鳴った。

電話の画面には、誰からの電話か表示されず、番号だけが表示されている。

『誰だろう。』

えみは、電話に出る。

「もしもし?」

電話から聞き覚えのある明るくて優しい声が聞こえてきた。

「あ。」

えみは大谷に電話したことを瞬時に思い出す。

「もしかして、えみちゃん?」

大谷は優しく尋ねる。

「はい。」

えみは、そっと返事をする。

「電話すぐに出られなくてごめんね。もしかして今帰り?」

「いえ。さっき家に帰ってきたところで。突然電話してすみませんでした。」

「そっか。本当にごめんね。何もなかった?」

「大丈夫です。すみません。心配かけて。」

「えみちゃん、僕今まだ大学にいるんだけど、これから家に戻るからご飯でも食べに行かない?」

「えっと。」

えみは返答に困る。

「ちょっと話したいこともあるんだ。少しだけ。」

えみに断られる前に大谷が続ける。

「分かりました。」

大谷にはいつもお世話になっているえみは、断らずに食事の誘いにのることにした。

「オッケー。ありがとう。じゃぁ、20分後くらいに行くから。」

そう言って大谷は電話を切った。

えみは、家に入り小さめのカバンにお財布と携帯を入れ直す。