目をゆっくり開くと、海のような真っ青な空が広がっていた。

「そうか、私が何もしていない間に、世界は逆転したのね。海は空になり、空は海になった。」
と、なんとも意味不明な言葉をつぶやいた。

でもそれがとても自分っぽい言葉で、自分が今でも前と変わらぬ自分であることを認識した。

真田えみは、工学部に通う大学3年生である。
3年生に進級してすぐ、ちょっとした理由があって1ヶ月間学校には行っていなかった。

「今日は行ってみようか・・・。」
と、少し冗談っぽく口に出して言ってみた。

そして鏡の前に立って、映し出されたものをじっと見つめる。
「うわー。」
と、自然に声が出た。

そこには、見知らぬ女性が立っていた。

元々太っている方ではなかったけど、顔がこけて病的に痩せている。

手を広げて見てみると、右手の中指につけていた指輪がくるくる回りそうだった。

この1ヶ月間、自分がどれだけ無気力だったのかを改めて実感した瞬間だった。