今日は金曜日で、えみとあずさは大学の近くのトンカツ屋さんに夜ごはんを食べに行く約束をしていた。

大学から出てトンカツ屋に向かおうと歩き出したとき、あずさの携帯電話の着信音が鳴った。

電話をかけてきたのは、あずさのバイト先の和菓子屋の店長だった。

あずさは、ごめんね。というジェスチャーをしながら電話に出る。

「お疲れ様です。はい。え。今からですか？えーと。」
電話をしながら、えみの方をチラッと見る。

あずさの話している内容から、今からバイトに来て欲しいという内容であることを悟ったえみは、
「大丈夫だよ」と口パクで話しながらOKサインをあずさに見せた。

あずさは、さっきよりも大げさにごめんねというジェスチャーを返した。

電話を切ると、あずさは、

「えみ本当にごめん。今日シフトに入る予定だった子が風邪で来れなくなっちゃったみたいで。」
手を合わせて深々とお辞儀をしながら言った。

「全然平気だよ！また来週行こうよ。」
えみは笑顔で答えた。

あずさは、ごめんね。ごめんね。と両手を顔の前に合わせて何度もえみの方を振り返りながら、足早にその場からバイト先へと向かった。

その時えみは少しホッとしていた。

今朝の出来後で気分が未だに落ち込んでいたえみは、本当は家に帰りたいと思っていたからだ。

えみは、あずさが見えなくなるとトンカツ屋とは逆方向にある家へ向かって歩き始めた。