「今…何て…?」

思いもよらなかった井上の言葉に、えみは右手に持っていた家の鍵を地面に落とす。

「今何て言ったの?」

目から大粒の涙を流しながら、えみが井上を真っ直ぐに見つめて言った。


「光輝は、亡くなったんだ。」

井上の声はかすれていて、声を出すのが精一杯だった。

「うそ。だって、光輝からのメール。」

えみは、自分の電話をポケットから取り出して、光輝から届いた最後のメールを井上に見せる。

「ごめん、別れよう。ってそう言ったの。それだけ…。」

そのメールを見た井上の目から一筋の涙が流れた。

「光輝の命日だ…そのメール…光輝な亡くなった日の朝に送られてる。」


井上は、涙で濡れた自分の顔を隠すように俯く。

「光輝…どうして…。」

えみはそのとてつもなく大きな事実を受け止める術もなく、その重さに押しつぶされるように、その場に座り込んだ。