井上は、玄関のところで立ち止まり深く呼吸をした。

「真田さん、昨日はごめん。」

えみは、何を答えるわけでもなく井上の方を見つめた。

「傷付けたこと本当に後悔してる。でも自分でもどうしたらいいのか分からなかったんだ。」

井上の声は震えていて、えみにも緊張感が伝わってくる。

「あの夏祭りの日、真田さんが見つけたペンダント‥‥あれは、俺のなんだ。」

その言葉を聞いて、えみの目が見開く。

「何‥言ってるの?あれは‥あれは光輝のペンダントだよ。」

えみと井上の目が合う。

そして井上がゆっくり、落ち着いた声で続けた。

「光輝が、光輝が俺にくれたんだ。」