「…どうして電話、くれたんですか?」


自転車を漕ぐ彼の背中に問いかける。


「お前の友達から連絡があったんだよ。いつもなら、もうバイトから帰ってる時間なのに、まだ帰ってこないってな。それに電話も繋がらないって心配してた。」

「めぐから?!じゃあ、結城さんの電話の前にめぐからもかかってきてたんですね…。だけど、なんでめぐは結城さんに連絡したんだろ…」

「俺とお前が同じバイト先だからだろ。今日は俺はバイトじゃなかったけどな。」


そこまで聞いて、さっき車から降りてきた彼を思い出す。


今日は金曜日だし、もしかしたら友人といたんじゃ……。それとも彼女かもしれない。


とにかく、彼に多大な迷惑をかけたことには変わりなくて、とても申し訳ない気持ちになった。


「すみませんでした…。金曜の夜だし出かけてたんじゃないですか?それなのに私のせいで、本当にごめんなさいっ!」

「確かに出かけてたけど、もういいよ。無事に迷子の確保も出来たしな!それより、これからは一人の時はバスで帰って来いよ。もう次は迷子になっても迎えになんて来ないからな。自力でスマホで位置確認して帰って来いよ。」


最後は少しだけ意地悪そうな口ぶりでそう言った彼に、大人しく「はい…」と答えたのに。