あ…!と思った時には既に遅かった。


キッチンの入り口から、中を確実に見ている無愛想男の表情が固まった。


そして彼は、「はぁ…マジかよ。」と呟くとキッチンには入らずに缶を持ったままUターンをして戻ってきた。


私がもう少し早く気づいて気を利かせていれば…そう思ったのが表情に出ていたのか、


「お前…気づいてたのかよ。」


とちょっと、不機嫌モード。


「はい…あ、いえ…」

「どっちだよ。」

「どっちって…二人の何を見たんですか?」


まさか…私たちがすぐそばにいるこんなところで、キ…キスなんてことは……


“ キス ” という単語を思い浮かべただけで、何の経験もないお子様な私は顔の熱が一気に上がる。


だけど、私の考えはやっぱりお子様だった…。


「俺に言わすな。それくらい察しろよ。」