彼の笑顔に出逢いたい

何も返してくれない事に居たたまれなくなって、恐る恐る目を開いて無愛想男を見ると、呆れる様に見ていたはずの彼の目が明らかに私の胸の辺りに注がれていた。


「み、見ないでください!」


思わず大きな声を出してしまった。


「…見たくて見たわけじゃねぇし。お前って、本当バカ丸出しだな。もう見ないから、早く着替えて戻ろうぜ。」


無愛想男が呆れたように言いながら、私に背を向け車の最後部ドアを開ける音が聞こえた。


なんだかさっきから上手くいかない。


みっともないところばかり見られて、無愛想男が言う様にバカ丸出しで手のかかる子供みたいで本当に恥ずかしい。


ドアを開けてくれている無愛想男も私を見ない様にしてくれていたけど、私も彼の方を見ない様にして着替えを取った。


「じゃ、あっちで待ってるから着替えたら声かけて。後部座席なら外から見られる心配もないだろ。」


そう言って車から少しだけ離れたところに歩いて行く彼を見ながら、なぜか置いていかれる心細さの様なものを感じた。