彼の笑顔に出逢いたい

これは、相手が無愛想男だからじゃない。


男性に免疫のない私が、事故とは言え、こんなに男性と密着する事なんて今までなかったから。


しばらく山道を走っていくと、木で作られた大きな看板が見えてきた。


もう少し進んだ先で道が左右に分かれているようだ。


私たちの乗る車は、その左側の道を看板に従い突き進んでいく。


「もう少し出るのが遅かったら、今頃渋滞に巻き込まれてただろうな。」


片桐先輩が言うように、ここまで来る間、車は渋滞に巻き込まれる事なくスムーズに走ってきた。


車はどんどん山奥に入り木々の合間からは川が見えてきた。


隣の無愛想男が窓を少しだけ開けたようだ。


上流から流れてくる川のせせらぎの音が耳に届く。


「そうですよね。ゴールデンウィークだし、どこに行っても渋滞だろうと思ってました。」

「そうならない為に、早めに出発して正解だったな。」

「運転、お疲れ様でした。ありがとうございます。」


めぐの声は弾んでいた。