一人は言うまでもなく笑顔で。
「花乃ちゃん、よろしくね」と、二度目にも関わらず握手まで求められたのに対して隣に座る彼は、チラッと目線さえも向けることなく「…よろしく」とこれまた愛想もクソもない声が返ってきただけ。
最後は彼の番。
なのに、彼は何も言わない。
この流れなら普通、名前くらい言うのでは?
目の前に座る人の、余りの無愛想ぶりに引いていると。
「おい晴。お前も名前くらい言えよ。感じ悪すぎて皆引いてるだろ。」
片桐先輩が苦笑しながら晴と呼ばれたその人の肩を叩く。
「こいつは結城(ゆうき) 晴(はる)。無愛想だけど悪い奴じゃないから。」
片桐先輩がそう言っても、悪気がないとは思えないほどの無愛想ぶりだ。
だけど、彼のその名前にはどこか聞き覚えがあるような気がした。

