「小田原…」


芽依を探しに来た、屋上に小田原が寝てた。


「芽依は?」

閉じていた、瞼を微かに開けて、小田原が叫んだ。



「あっ、男おんな!」


「おとこおんなじゃないよ。」



「じゃあ、ちっとは髪伸ばせよ。」



そう言って、私の髪に小田原が手を伸ばした。



「触んなよ、…
         それより芽依は?」


「それよりって、何だよ。」



舌打ちして、小田原がぽっけからチョークを出してしゃがみこんだ。



「芽依にはさ言ってたよ、引っ越すって。」




ほっとして、胸が少しだけチクリとした。 



「そっか、よかった。
でも芽依、弱っちいからちゃんと見といてやんないとダメだよ。」



「うん、だから別れた。」



なんともないみたいに、小田原が言った。



「はぁ?」



「ちゃんと見てやれる自信ないから、別れようって言った。」



なんともないみたいに言うのが許せなかった。


「ふざけてんのかよ、テメェ」


襟ぐりを掴もうとして、簡単にかわされた。



「芽依がどんな気持ちで、どんな気持ちで、あんたと、」



「じゃあ、お前の気持ちはどこにあるんだよ。」



「はぁ」


「お前さ、これおぼえてる?」




そう言って、指差した地面にはチョークの汚い字で、書き殴ったあとがあった。





are you there



そこにいますか?