【この片恋、非公認につき……】




「あぁぁぁー!
颯馬くん行かないでぇーっ!」

「……」


もはや相手は無視!
でも気にしないし!
もう一声かけちゃうし!


「颯馬く……」

「こらこらこらこらぁ!
何してんの変人っっ!」

「あ、柚那じゃーんっ!
おはよう、心の友よ~」

「……ごめん。
こんな変人と友達になった覚えは無い」

「ひ、ひど!」



私、湊麻帆には日課があります。
それは私の通う高校にいる同い年の王子、千里颯馬くんの追っかけをすること!


「アンタねー、ここまで千里くん追っかけて彼女から文句言われないのが奇跡だからね?」

「文句じゃないけど次こんなことしてるの見たら藁人形にしてあげるって笑顔で言われた!
仲良くなれてるのかなっ?」

「……文句すっ飛ばして脅迫きちゃったよ」



片手で頭を抱えて難しいことを言っている柚那は置いといて。
私は颯馬くんの去って行った方角に向き直り、お祈りするかのように両手を合わせる。


「神様仏様女神様っっ!
今日も颯馬くんとお話する機会を与えてくださってありがとうござ……」

「いやだから怖いんだって!
アンタの存在そのものが!
ストーカーって言われて突き出されてもフォローのしようがないわァァァ!」

「……朝から元気だね柚那」

「待って何その急な切り替え。
なんであたしが可笑しい人みたいな目で見てんの!?」



騒がしくあーだこうだと言ってくる元気な柚那は置いといて。
颯馬くんの後を辿るように校舎へ入っていく。
それもまた日課である!

……え?
彼女でもないのに気持ち悪い?
もはやただのストーカーかそれ以下?
本当にやばいからやめたほうがいい?


「違うの!
それを越えた先に真実の愛が……」

「無いから。
それを越えたら刑務所行き。
あたしはあの上記三つを忠告はしたんだからね!」

「別に颯馬くんには好かれなくてもいいの!」

「……じゃあ何のために追っかけてんの?」

「自分が自分であるために」

「……え?」

「颯馬くんって将来……総理大臣とか向いてるかもね!
日本大きく変えちゃったり!」

「……ごめん。
本気で大丈夫か、麻帆」


そんなこんなでようやく私の一日は始まっていくのである……