「例えばの話さ、」


だるそうに話す目の前のタレ目君は、氷の溶けてきたアイスコーヒーをストローでかき回しながら何でもないことのように切り出した。


「好きな奴が、親友のこと好きだったら、お前はどうする？」


日常会話のように投げられた言葉のボールは、不安定に飛んで目の前にぽとりと落ちる。
いや、いきなりそんな球捕れるかよ。


「…それってあんたの実体け」

「例えばの話だ」

「あ、そう」


アイスコーヒーを掻き回す手は止まない。ていうか飲まないの？氷どんどん溶けてますけど？

呆れを含んだため息をついた後、私はとりあえずその"例えばの話"の答えを考えることにした。


そもそもタレ目君が私をファミレスに呼び出すなんてこと自体珍しいことで、恐らくこの例えばの話が本題なのだろう。


タイミングよく運ばれて来たホットミルクティーをカイロ代わりにしてみたけど、とても暖まりそうになかった。