試合後、私はずぶ濡れになったまま、帰ろうとしていた。

グラウンドの横を歩いているとき、向こう側から泥だらけの選手が近づいてくるのを見た。

あ…竜馬センパイ。

疲れはて、肩を落とし、下を向いてとぼとぼと歩いている。

自分が先制したのに、試合をひっくり返されて負けたのが相当ショックなんだろう。

私と10メートル位の距離に近づいたとき、センパイが顔をあげ、私を見た。

疲れた表情で、私を見つめる。

あ、あっ…

目が、合っちゃった。

私は今、センパイと見つめあっている。

どうしよう、どうしよう…

ドギマギしている私に、センパイがゆっくりと右手をあげ、私に差し出す

何かを、言いたそうに…