丸い輪郭に、鼻は上向きで正面からでも穴が目立つ。目は小さくて、その上一重。
厚い唇に、大きな前歯。歯は磨いても黄ばんでいる。
お世辞にも綺麗とは言えない見た目。


この見た目では、生きていることが罪だ。
何度死ねと言われたことか。


同じ家で暮らす兄でさえ、部屋に篭った時は早く死ね、生きる価値も無い、マジうざいと言いながらクッションを蹴る。
勿論、学校ではそれ以上だ。


私が消えた世界にデメリットを感じない。私は立派に死ぬ私を想像し、口角を上げた。


この地獄に連れてきた男は、左に移動する。壁紙が捲れ、その下からドアが現れた。
男が降りていくのが見えたので、私は左に進む。階段を降りるとどんな部屋があるのか。


「ねえ、今の内に逃げよう!」


藤原さんが皆に呼びかけた。


「ちょっと光、聞こえるって」


芝村さんが藤原さんに耳打ちする。


「やばっ!とにかく逃げよ」


もと来た道を引き返す流れが出来た。私もその流れに乗っていく。一人だけ残るのは癪に触った。


私を一番後ろにして、ぞろぞろと入り口に向かう。すると、それに気づいたのか階段を上る音が聞こえた。


「ちょっ……もっと速く!」


足音のスピードが上がった。焦り始めている。
先頭の藤原さんがドアノブに手をかけようとしているらしい。
光、早く開けて!という声がした。


「おっと!忘れてた……」


バチッという音がした。


「次そこ触ったら、感電して死ぬよ」


一瞬で静まり返った。こうなったら絶望しかない。


「もう、何なのよ!私たちが何をしたっていうのよ!」


芝村さんは地団駄を踏む。生きたくて仕方がない人にとったら、こんな現実は到底受け入れられるものではない。


「選ばれたのだから仕方がない。ちゃんとついてくるんだよ」


すすり泣く声、怒りに任せて壁を蹴る音、諦めの言葉、人は死に直面したときの反応もそれぞれだ。


私は、静かに死に向かう。
最後尾の人も、前を歩く私も、いつ死ぬかわからない。
階段は狭かった。男の後ろに死の行列が出来ていた。