「ねぇ嘘だよね!?死ぬとか……先生やり過ぎ!」


「そういう冗談面白くない!」


「やだ美幸……冬花は死にたくない!」


「いやーこれを考えた人は中二病でしょうねー」


「あの死体、リアル過ぎないか?」


悲鳴、泣く声、笑い声、多くの人間の感情が放たれるとこの部屋も狭く感じる。そうだ、まだ冗談の可能性はある!


「最近の子はそう考えるのか。まあ、そういう漫画で溢れかえったもんなあ」


私たち全員を見ようとする。私は標的になりたくなくて、すぐに目を合わさないようにする。


「飛び抜けて可愛い子は……」


人指し指を左右に動かす。


「この子くらいかな?」


指されたのは鈴谷 映那(すずや あきな)さんだった。
鈴谷さんはハーフの女の子で、ゲームが大好きだ。確かに可愛い。


「来い」


「あっきー、いってらっしゃい」


「あーちゃん、行きたくないよ~」


鈴谷さんはイヤホンを外し、鬼怒雅 葵(きぬが あおい)さんと離れる。
横に立っていろと命令する。そして、前で組んでいた鈴谷さんの手をほどいた。


「ちょっとあいつ変態じゃん!鈴谷さんに何する気!?」


「教育委員会に訴えるよ!てかあの先生誰?」


藤原さんと芝村 綾花(しばむら あやか)さんが怒った。勇気があるなあ。


「僕は先生じゃない。この学校の卒業生だ。先輩にそんな口を聞いていいのか?」


「知らないし!てかそんなに歳離れてないでしよ!威張るな!」


藤原さんは負けずに言い返す。
その頃、男子の方で何か動きがあった。こそこそと話している。


「すっ鈴谷さんを返せ!変なことしたら許さないぞ!」


鈴谷さんのことが気になっていた佐田 健(さだ たけし)が、声をあげた。すると男子がわっと冷やかした。


「……君、面白い人だね」


顔の横で指を鳴らす。そして、シュッと手を前に突きだした。


「殺したくなるよ、見せしめにね」


佐田は首を吹き飛ばされて死んだ。転がる佐田の首を悲鳴をあげて避ける。

夢じゃない。これは、現実だ。
死にたくないと泣き叫ぶ人も、何も言わず俯く人も、本当にいるんだ。

一年D組四十二人、いや、四十一人は……四十人になった。

頭も良くない、運動神経もない、そして容姿が悪い。
こんな私が生き残れるとは最初から思っていない。


いいじゃないか。死んだって。

私の死に場はここか。

人を不快にさせ、何度も消えることを望まれた私は、今ここで死を覚悟した。