「フッ。」

え?今笑われた?

「ばーか。俺だよ。」

わたしはその口調にはっと顔をあげた。

大好きで毎回ドキドキさせられる低音の声。嫌になるくらい知ってる。

「あ、相川!?」

「間に合ってますっておかしーだろ。」

そう言って口角をあげて笑う相川は今日もカッコよくて。

サラサラの前髪からのぞく切り長の瞳にはわたしが映っていて、それだけで心臓をうるさくするのには十分だった。


「な、なんで!?」

「おやじん家に引っ越したんだ。」


わたしは思わず相川の顔色を伺った。

だけどその表情からは相変わらず何も読み取ることはできなかった。

もちろん、聞きたいこといっぱいあった。

大丈夫?どうしたの?って。


でも、これはきっと彼女が出る幕…わたしじゃない。