それから私は毎週月曜日と木曜日に図書委員の仕事をするようになった。図書委員の仕事は、本の貸し出し・返却の処理や本の整理、図書室の掃除などがある。基本的に図書委員二人でやるのだが田口先生の言う通りサボる人も多く、私は1人でやったり、当番じゃない曜日に手伝ったりしていた。先生はできる範囲でいいから無理するなよと言ってくれるけど、本が大好きな私にとってはとても楽しい仕事だからやりがいを感じる。
「そろそろ先生来るかな・・・」
先生はいつも昼休みが始まってだいたい20分後に来る。
~ガラガラガラ~
図書室に入ってきた先生が扉を閉めてこっちに来る。
先生は「浅川悪いな。お前ひとりにやらせて。あ、そうだ昨日も当番じゃないのに手伝ってくれてたよな。ありがとな」と言って私の隣に座った。私は一言「いえ」といった。自分が誰かに必要とされていることがうれしくて泣いてしまいそうでそれしか言えなかった。いつまでもうつむいている私の顔を先生が覗き込んで、
「どうした?」と心配してくれる。そんな先生の優しさに今にも涙がこぼれそうだった。
「何でもないです。」というと先生は「そうか」と私の大好きな笑顔で笑ってくれた。先生の笑顔を見ていたら妙に安心して気づいたら話し始めていた。
「私ね、お父さんの仕事の都合で小学生のころから転校することが多かったの。小学生のころ仲のいいお友達ができてもいつかお別れしなくちゃいけないということに気づいちゃって、それから」泣きながら早口で話す私に先生は「ゆっくりでいいから浅川が思ってること全部教えて?」と言いながら背中をさすってくれた。
「私ね、強がってるけど本当は一人が怖いの。友達だってほしいしみんながしているようなこともしたい。一緒に洋服買いに行ったり、放課後にクレープ食べに行ったり、遊園地に行ったりしたい。でも、せっかく仲良くなったのに離れることになるのはつらい。だったらひとりでいるほうが楽なの。だから、私この学校でも極力人とかかわらないようにしようと思ってたのに、先生と出逢って人とかかわることの暖かさだったり、嬉しさや喜びを感じてしまうの。一人でも平気だったはずなのに、図書委員を始めてから少しずついろいろな人と話すようになってもう一人でいるのが怖いよ。何よりも先生がいつもそばにいてくれたからいつまでも強がっていちゃだめだなって思うようになれたの。ありがとう先生。」気が付いたら私は今まで誰にも言えなかったことを先生に話していた。泣きながら話す私を背中をさすりながら先生は最後まで聞いてくれた。話し終わると私の頭をなでながら微笑んでくれた。
「初めて浅川を図書室で見かけたとき、本がすごく好きなんだなってみててすごい伝わってきたよ。本を読みながら、笑ったり泣いたり怒ったりしている君を見ているのが楽しかった。それから毎日図書室にいる君がとても不思議だったんだ。君くらいの子だと友達とおしゃべりしながらご飯を食べることが多いだろう?だから君みたいな子は珍しかったんだ。そして気づいたら君に話しかけてた。」先生はそう言って恥ずかしそうに笑ってくれた。