昼休みのチャイムがなり、私は図書室まで走った。
図書室の扉をそっと開けると大好きな本の香りが胸いっぱいに広がった。
「やった~誰もいない!」
いつもいる図書委員が今日はいない。私はお気に入りの窓側の一番奥の席に座り、昨日途中だった本を開いた。しばらくすると、扉が開く音がした。図書委員かなと思いあまり気にせず本を読み続けていると、足音が近づいてきた。
「あのさ」
え、私に話しかけてる?と思いながら恐る恐る顔を上げるとこっちを見ながらにこにこ笑っている男の人がいた。私がきょとんとしながら見つめていると、その人は
「浅川未来さんだよね?」と私の顔を見ながら微笑んだ。
「え?なんで私の名前・・・」私はかなりびくびくしながら聞いてみた。すると彼は、
「いつも昼休みに図書室来てるよね?俺、国語教師の田口雅人。それから図書委員会の顧問。よろしく。」って私に微笑んだ。
「キミにお願いがあるんだけど、図書委員になってくれない?」
「え?でも私、この学校のこともまだよく知らないし、人と話すことも苦手だし、向いてないと思います。」
「でも本好きでしょ?」
「好きですけど、私またすぐ転校するかもしれないから。」
「たとえそうだとしても、俺は君にやってもらいたい。ほら、今日図書委員来てないでしょ?図書委員って楽そうって思われがちでサボる子も多くてさ、それに最近紙の本読む子少なくなってきただろ?だから君みたいに毎日図書室にきて本読んでる子見るとうれしくて、だからお願いできないかな?」
「あの、本当に私でいいんですか?」
「キミがいいんだ。本が大好きな君だからいいんだ。」
そういって先生は笑った。私の存在価値が認められたような気がして嬉しかった。先生の笑顔を見ていたら、私まで自然と笑顔になっていた。
これが私と先生との初めての出会いだった。