「どうして、破るの?」
お兄さまは一度に留まらず、細かくなるまで何度も破いていく。
テーブルの隅に置いてある空の灰皿に、紙屑となったものを入れると、伝票を手に取り立ち上がった。
「待ってっ」
私はそそくさと歩いていくお兄さまを必死に追い掛けた。
「釣りは結構」と五百円札をウェイトレスに握らせると、追い付いた私の手を引いて、足早に店を出た。
そのまま立ち止まることなく屋上へ連れて行った。
屋上に辿り着くと、人は私たち以外誰もいなかった。百貨店に入る前に見た青空はいつの間にか橙色に染まっている。
「お兄さま……? きゃっ」
私は窺うように顔を見つめると、突然引き寄せられて腕の中に閉じ込められた。
生まれて初めての抱擁に、私は驚いて棒立ちのまま固まってしまった。
「すまない。嫁入り前の君を抱き締めて……でも、早苗ちゃんが悪いんだよ? あんまり僕の気持ちに気付かないものだから」
「え……?」
抱き締められて、そんなこと言われたら……単純な私は都合よく解釈してしまう。
熱に浮かされるようにぼーっとしだした私に、お兄さまは耳元で甘く囁いた。
「よく聞いて?
――――僕は早苗ちゃんを愛している」
お兄さまは一度に留まらず、細かくなるまで何度も破いていく。
テーブルの隅に置いてある空の灰皿に、紙屑となったものを入れると、伝票を手に取り立ち上がった。
「待ってっ」
私はそそくさと歩いていくお兄さまを必死に追い掛けた。
「釣りは結構」と五百円札をウェイトレスに握らせると、追い付いた私の手を引いて、足早に店を出た。
そのまま立ち止まることなく屋上へ連れて行った。
屋上に辿り着くと、人は私たち以外誰もいなかった。百貨店に入る前に見た青空はいつの間にか橙色に染まっている。
「お兄さま……? きゃっ」
私は窺うように顔を見つめると、突然引き寄せられて腕の中に閉じ込められた。
生まれて初めての抱擁に、私は驚いて棒立ちのまま固まってしまった。
「すまない。嫁入り前の君を抱き締めて……でも、早苗ちゃんが悪いんだよ? あんまり僕の気持ちに気付かないものだから」
「え……?」
抱き締められて、そんなこと言われたら……単純な私は都合よく解釈してしまう。
熱に浮かされるようにぼーっとしだした私に、お兄さまは耳元で甘く囁いた。
「よく聞いて?
――――僕は早苗ちゃんを愛している」


