今思えば、あの日をキッカケに私たちは仲良くなったのかもしれない。 あの後すぐに彼を好きになった私は、彼と一緒に帰る理由を作るため、雨の日に何度かわざと傘を忘れたこともあった。 そんな昔のことを思い返していると、正面玄関に向かっている那智の姿が見えた。 傘を差す彼の左隣には、彼女がいる。 あの時と同じように、傘を左側に寄せている那智に、私はひどく胸が痛んだ。 あの日のように、私が傘を忘れてしまったことを知らない那智は、私じゃない誰かと一緒に肩を並べて消えて行った───。