「ねぇっ、名前、なんて言うの?」



振り返った彼がさっきより大きい声でそう聞いてきた。



「愛那!」



初めて会ったのに、躊躇なく自分の名を叫んだ。



「また2週間後、ここで会おう!」



彼は手を振りながらそう言い残し、本当にその場を去ってしまった。



5分も話していただろうか。



いきなり現れた彼の顔が忘れられない。

印象的な低い声が………今でも耳に残ってる。



もうこの場には私ひとりしかいないのに………なぜかまだ、心臓の鼓動が早い。



ずっとこの島で暮らし、父と2人暮らしで家事に追われた生活をしてきた私に恋愛など程遠いものだった。



でも、この胸の高鳴りが恋だとするならば………


”きっと恋であれ”と思ってしまう。