「西条くん部活は…?いいの…?抜け出してる、よね…?」
「んーっ、顧問厳しいんだもん、きゅうけーい!それに篠宮さんもいるしね。」
「ふふ、なにそれ。」
「だから、このことは内緒ね?顧問にバレたらサボりだって怒られちゃうから。」
柔らかな髪が揺れて、白い歯が覗いた。
そこに綺麗な人差し指が添えられて、いたずらっ子な笑みを浮かべる。
…君は、本当にずるいんだ。
私の心をきゅんとさせて、掴んで離さない。
私をいつだって揺さぶるその言葉に、こっちがどんなに乱されているのかも知らないで。
西条くんにたくさん話したいことがあるのに。
どうして、上手く話せないのかな。
今日見た小さい子のシャボン玉が綺麗だったとか。
毎日通る道の犬が可愛いだとか。
…ああ、ダメ。西条くんにとってはつまらない話ばかり。
なんて1人で話題の審査の連続。
「5限目〜?5限目とか俺寝てたかもしれねっ!」
「…起きなきゃダメだよっ。」
「ははっ、確かにー!」
でも、目の前に君がいる。
それはまぎれもない事実だった。
それだけで、胸が膨らんで、ただの教室が鮮やかになる。


