こうして天乃は紀ノ上 光、洸と共に3人で暮らすことになった。

光の仕事柄、3人で遊びに出かけるようなことはなかったけど、
休みの取れた時は遊園地やショッピングに連れて行ってくれたりした。

彼女は、2人の前で疲れた、とか弱音を吐いたりは決してしない強い人だった。

疲れているだろうに、せっかく取れた休みは全て2人のために、家族の幸せのために使っていた。

天乃が初めて家族旅行というものに行ったのも、光に引き取られてからだ。

天乃の母親・天音は旅行を嫌う人だったから。

だから天乃は天音と出かけた記憶はほとんどない。

覚えているのは、天音が行方不明になる、ほんのすこし前。

そうだ、彼女が行方をくらませたのは
天乃が山の神社に行きたいと駄々をこねて出かけた直後のことだった。

私のせいかもしれない。

あの時あんなわがまま言わなければよかった。

そんな後悔も今となっては役に立つものでもなんでもなく。

あれから9年と数ヶ月が経って、
2人は中学3年生になっていた。