.
ミーンミンミンミン・・・
雲一つない空の下、耳を塞ぎたくなるくらいの蝉の声が私を包む。
でもそんな蝉の声なんて聞こえなくなるほどの、相手側からのブラバンの音。応援の声。部員の声援。
チア部は腰に手を当て、
吹部は楽器を手に持ちながら見つめる。
・・・私もギュッと、トランペットを抱きしめて。
夏の県大会決勝、4-3で迎えた9回の裏。
私たちの学校が先制していて、あとアウトをひとつとれば勝ち。
ランナー二塁三塁・・・。
「・・・がんばれ・・・・・・。」
肩で息をする、背番号1の後ろ姿。
小さい時からずっと見てきた、その後ろ姿。
胸が、つまりそうになる。
投げたボールは高めに入り、電光掲示板の光るところはもう残っていない。
「勝てますかね・・・」
隣で後輩が、私の目を不安げに見つめる。
「・・・勝てるよ。絶対、勝てる。」
だって、私の幼なじみだもん。
・・・去年の夏が思い返される。
泣き崩れたあの夏。
「先輩すみません」
そう言って立ち上がれなかった、あの姿。
毎朝私を起こしに来て、そのまま朝練へと向かっていたこの1年間。
誰よりも側で、見てきた。
「・・・がんばれ」
「ーーーー頑張れ!!!」
響いた私の声に、まわりが振り返る。
そしてそれは伝染し、たくさんの人が「がんばれ!」と声を出していく。
そして投げた、最後の1球ーーーー
「わ、わあ・・・!!!」
瞬間沸き起こった、こちら側スタンドの歓声。
後輩に抱きつかれながら私は、ただ呆然とその場に立ち尽くす。
投げた最後の1球は、まっすぐにキャッチャーのミットに収まっていた。
ベンチから野球部のメンバーが飛び出してきて、エースの元へと駆け寄っていく。
あちら側に見えるのは、去年見た風景と同じもの。
・・・・・・勝ったんだ、
甲子園、行けるんだ・・・・・・。
ずっと夢にしてたそれが叶って、仲間に囲まれて嬉しそうに笑う彼を見て
私まで泣きそうになってくる。
視界がじわじわと滲むその真ん中で
ふと振り返った視線がぶつかる。
そして
私を捉えたその視線は
大きく、大きく拳を空へと突き上げた。
「・・・おめでとう!!!」
この夏が終わったら、想いを伝えよう。
だけどこの夏が
日本一長い夏でありますように。
.
ミーンミンミンミン・・・
雲一つない空の下、耳を塞ぎたくなるくらいの蝉の声が私を包む。
でもそんな蝉の声なんて聞こえなくなるほどの、相手側からのブラバンの音。応援の声。部員の声援。
チア部は腰に手を当て、
吹部は楽器を手に持ちながら見つめる。
・・・私もギュッと、トランペットを抱きしめて。
夏の県大会決勝、4-3で迎えた9回の裏。
私たちの学校が先制していて、あとアウトをひとつとれば勝ち。
ランナー二塁三塁・・・。
「・・・がんばれ・・・・・・。」
肩で息をする、背番号1の後ろ姿。
小さい時からずっと見てきた、その後ろ姿。
胸が、つまりそうになる。
投げたボールは高めに入り、電光掲示板の光るところはもう残っていない。
「勝てますかね・・・」
隣で後輩が、私の目を不安げに見つめる。
「・・・勝てるよ。絶対、勝てる。」
だって、私の幼なじみだもん。
・・・去年の夏が思い返される。
泣き崩れたあの夏。
「先輩すみません」
そう言って立ち上がれなかった、あの姿。
毎朝私を起こしに来て、そのまま朝練へと向かっていたこの1年間。
誰よりも側で、見てきた。
「・・・がんばれ」
「ーーーー頑張れ!!!」
響いた私の声に、まわりが振り返る。
そしてそれは伝染し、たくさんの人が「がんばれ!」と声を出していく。
そして投げた、最後の1球ーーーー
「わ、わあ・・・!!!」
瞬間沸き起こった、こちら側スタンドの歓声。
後輩に抱きつかれながら私は、ただ呆然とその場に立ち尽くす。
投げた最後の1球は、まっすぐにキャッチャーのミットに収まっていた。
ベンチから野球部のメンバーが飛び出してきて、エースの元へと駆け寄っていく。
あちら側に見えるのは、去年見た風景と同じもの。
・・・・・・勝ったんだ、
甲子園、行けるんだ・・・・・・。
ずっと夢にしてたそれが叶って、仲間に囲まれて嬉しそうに笑う彼を見て
私まで泣きそうになってくる。
視界がじわじわと滲むその真ん中で
ふと振り返った視線がぶつかる。
そして
私を捉えたその視線は
大きく、大きく拳を空へと突き上げた。
「・・・おめでとう!!!」
この夏が終わったら、想いを伝えよう。
だけどこの夏が
日本一長い夏でありますように。
.

