川崎の本陣には、

「宇和島侍従様」

と書かれた看板が掲げられ、周りには竹に雀の伊達家の紋が打たれた提灯が下がり、幔幕が立て回されてあった。

その門前へ、

「ごめん」

と夜陰に紛れるよう訪ねてきたものがある。

旅の姿をした武士であった。