春が、来た。

よそより早く咲く宇和島の桜を見捨てるかのように、秀宗は江戸へと発ち、大坂まで船で上ると、そこからは陸路でまず奈良から伊賀へ出、白子浜からは田原まで再び船で進んだ。

田原からは新居の関を越え、東海道をひたすら進み、いよいよ明日は江戸入りとなる川崎の宿へ着いたのは、宇和島を発って約一ヶ月ほどがすぎた頃である。

この間。

川崎は桜が散り始めている。