するする、と清兵衛が進み出、 「おそれながら申し上げます」 と平伏した。 「確かにご公儀よりのお達し、それがしもうけたまわっておりまするが、なにぶんまだ治め始めたばかりにて、領内の検地も済んではおりませぬ」 秀宗はうなずく。 「そのなかでいかに石垣の補修をせよとて公儀より仰せ出されようとも、領民の治がなくては、先立つものが足りませぬ」 「ならば」 と声をあげたのは桜田玄蕃である。 「仙台からの六万両を使えばよいではないか」 何を後生大事にしておる、と詰め寄った。