あたしのヒーロー*犬とあたしの物語*


線路から出た


遮断機の向こうのランに手を伸ばす



フヮと風が吹く


電車があたしの後ろを通る



「――・・・・ラン?」



そこには、ランの姿は無い



・・・・「ラン」



「・・・・・―ラン・・・?」



いつもの声も聞こえない


「ラン、ラン・・・・?」



手にはランの温もりが残る



「・・・ラン・・・ッ」


ランはもう、二度と戻ってこない

ランはもう、戻っては来ない


でも


確かにあたしは


『ラン』を見た


『ラン』はそこにいた