帰り道。

少し家に帰りたくなくて、夜の町を散策していた。

いくあてもなく、何となく星空を見上げて。

寒いなぁ何て思い、ふと、足を止めたとき。

街角の小洒落たカフェが目に入った。

カフェというより、喫茶店と言った方がしっくり来るような、そんな雰囲気のお店。

-カランカラン

思わず見入っていると、中から店員さんらしき人が出てきた。

その人と、目が合う。

不思議そうに首をかしげたその人だったが、ふっと顔を緩めて、優しく私に笑いかけた。

ドキッと、胸が高鳴る。

「いらっしゃいませ」

そういって、その人は扉を開けた。

また、きれいな鐘の音が鳴る。

「是非お立ち寄りください」

その柔らかな光に憧れたのか、もしくは違うなにかに惹かれたのか……。

私は考えるまもなく、『もみじの喫茶店』へと足を踏み入れていた。