……誰だよ。
間違いなく分かるのはそこらへんのチンピラではないということくらい。
「…なんだよ」
「萩花お嬢様を……ご存知ですよね」
“萩花お嬢様”
それはきっと家にいる萩花のことだ。
ということはこの男は萩花に仕える執事か?
それにしては若いな。
「知ってるっつったらどーなるんすか?」
「お嬢様を返してください」
表情を一つも崩さずに落ち着いた声で言った執事。
もっと、焦ったりしねーのかよ。
そんなんだからアイツも逃げ出したくなるんだよ。
寂しいって一人で泣くんだよ。
お前は執事なんだろ?
お前が誰よりも一番近い距離にいるんだろ?
だったら、守ってやれよ。
それがお前の役目なんだから。
「無理っつったら?」
「今すぐに返せ。
お前みたいなやつにお嬢様は渡さない」
いきなり口調が変わった執事。
やっと、本性を見せやがった。
本当は心配でたまんないんだろ?
家出だけでも心配なのに
その家出先が俺の家だもんな。



