【完】溺れるほど、愛しくて。




ただ、あたしが連れていかれるのをひどく冷たい瞳で黙って見ているだけ…。


そうだよ、彼は赤の他人だもん。
もっと早くに帰っていればよかった。


狭間さんの言う通りにして、車で帰っていればよかった。


バチが当たったんだ。
いつも、反抗ばかりしているから…全部自分のせいだ。


なのに……怖くて助けて欲しくて涙が溢れてくるのを必死にこらえる。



「待てよ、雑魚」



もうダメだ…と諦めかけていた時だった。
見ているだけだった彼が言葉を発してあたしに一歩ずつ近づいてくる。


あたしを連れていこうとしていた奴らも歩みを止めて、『ああ”?』と喧嘩腰に言葉を返した。


彼があたしに近づいて来ているのがスローモーションのように見えて、


綺麗な赤髪がゆらり、ゆらりと歩くたびに揺れて、コツン、コツンと歩く足音さえもゆっくりに聞こえる。