「はぁ…ったく、めんどくせぇな」



呆れたような声が聞こえたと思ったら、ポンッと頭の上に大きな手が置かれた。


ハッと弾けたように視線をあげれば、慶さんが照れくさそうにそっぽを向いて、ポケットに手を突っ込んでいた。



「別に慰めてなんかねぇからな、勘違いすんな」



ぶっきらぼうに言うけど、心配してくれているのが表情から滲み出てるよ。


慶さんはやっぱり優しい人なんだ。
ただ、少し不器用なだけで。



「ありがと…」


「今日でもう泣ききれ。
んで、明日からは泣かずに笑え」


「…えっ?」


「笑ってる方がお前には似合ってる」



ドクン、と高鳴っていく鼓動。上昇していく体温。


慶さんの言葉一つだけでこんなに胸が熱くなるなんて。



「それって…どういう…」



驚きすぎて涙なんていつの間にか止まっていた。


だって、今のは慶さんがあたしに言うような言葉じゃなかった。


信じられないんだもん…嬉しすぎて。