【完】溺れるほど、愛しくて。




あんな家になんて帰らない。
どうせ帰ったって明日には誰もいないんだから。


あたしがこんな夕方に向かうところといえば一つしかない。


慶さんのところだ。


追い払われてもあたしはめげないもん。


慶さんと一緒にいれば
少しはこの悲しみが癒える気がするから。



「会いたいよ…慶さん」



そう呟けば会える気がしたって言ったら笑うかな?

でもね、本当に会える気がしているんだよ。


日が沈む中、あたしは“Black City”へと向かい歩く。
一人ぼっちの影がゆらりゆらりと揺れる。


少し前まで隣には影が三つもあったのに。
今はあたしの影だけ。


その影を見ていると胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなる。



「ごめんね……」



抜け出してきてしまった罪悪感を消すようにあたしは歩みを勧めた。


目的地“Black City”に着くとあたしはなんの躊躇もなく入り、早歩きで歩く。


夜が近づくとここにはたくさんの不良たちが集まるからなのか


カラフルな頭をした人たちが夕方以上にいる。


歩くたびに痛いほどの視線を感じる。


当たり前か…お嬢様が通う制服を着ているんだから。


なかなか、そんな人はいないんだろうな。