「じゃあ、代わりに名前を教えてください」
「…しつこいな」
「いいじゃん、名前くらい」
せめて、名前くらい教えてよ。
少しでもあなたに近づきたいから。
「……赤羽慶(あかばねけい)」
ぼそっと静かに呟いた言葉をあたしはしっかりと聞いていた。
「ありがとうございます。慶さん」
あたしは名前を教えてくれたことがとても嬉しくて勢いよく頭を下げた。
「別に」
すると、上から抑揚のない低い声が降ってきた。
もう言葉では表せられないほどの嬉しさがこみ上げてきて頬が自然と緩んでしまう。
赤羽慶…赤羽慶…忘れない。
だって、あたしの好きな人なんだから。



