「今日は……何にしよっかな」
冷蔵庫を開けながら独り言をこぼす。
何を言っても返事なんて返ってこないんだもん。
冷蔵庫には一人分にしては多い量の食材がはいっている。
きっと、あたしに買い物に行かせないためだろうな。
どこまでも自由にさせてもらえないな。
自由になる時間があっても一人だから何も楽しくない。
ふと、彼があたしの頭に手を乗せた感覚を思い出す。
手……大きかったな。
なんて、変人みたいだからやめておこう。
そう思うのに気持ちは膨らむばかりで胸がジンジンと熱い。
「…好き」
そっと、名前も知らない彼への想いを口に出す。
せめて、名前だけでも知りたかったのにな。
会ってしまったからなのか前よりもずっと忘れられなくなってしまったような気がした。