「ただいま」



玄関は広いのにたくさんの靴がおけるのに置いてあるのはあたしが今脱いだ茶色のローファーだけ。


昔はここにはたくさんの靴が並べられていたのに。


ピンヒールや革靴やローファーなどそれはもう色々と。


だけど、今はあたしの靴だけ。
それはみんながこの家に帰ってきていないことを示していた。


今日もお母さんは病院に泊まりかな?


ちゃんと寝ているのかな?お姉ちゃんは良くなっているのかな?なんて寂しいけど考える。


またいつか、昔みたいに戻れるといいな。


狭間さんやメイドさんたちは仕事を済ませてもう帰っている。


それぞれ家庭があると思うし、長居させると悪いから。


お母さんたちには秘密で早く帰らせている。


料理だって自分で作れるし、お風呂はメイドさんがスイッチを押してくれている。


だから、本当にこの広い家であたしはひとりぼっち。


テレビをつけてもどうせまた寂しさが募るだけだからつけないようにしている。