「無理してるのバレバレだよ」


「……そんなことないよ」


「萩花、自分の気持ちを大切にね」



それだけ言うとお姉ちゃんはあたしの肩の上にポンッと軽く手を置いてからお母さんの方へ向かった。


自分の気持ちを大切に……か。


どうしてお姉ちゃんは
そんなこと言うのかな?


あたしにはそんなこともう関係ないのに。


そういえば…今日狭間さんのこと見ていないな。

なんか外せない用事でもあったのかな?



「それでは皆さん、これから二人の婚約を
正式に発表したいと思います」



ついに、その時が来てしまった。
あたしの人生の分岐点なのかもしれない。


上田さんにエスコートしてもらいながら、舞台の上に立つ。

ここからだと、みんなの顔が見渡せる。


だけど、あたしが今一番見たい顔は当たり前だけどこの中にはいない。


そう分かっているのに……どうして無意識に探してしまうんだろう。