【完】溺れるほど、愛しくて。




「総長がいねーと
なんもできねぇじゃねーかよ!」


“総長”というのは慶さんのことかな?

紅嵐の総長は不在ということになっていると聞いたこともあったけど。



「うるせぇな!
あんなやついなくてもいいだろ!」



メンバーの一人が五十嵐さんを思い切り殴り、
その反動で五十嵐さんは砂も混じった冷たい地面に尻もちをついた。


どうして、紅嵐はそんなことをするの?


大切な仲間なんじゃないの?

なのに、何も無いのに殴るなんて最低だよ…っ!


五十嵐さんも負けじと殴り返し、
そこから100対1の戦いが始まった。


あたしは見るに耐えなくて喧嘩から目をそらした。



──…うぅ!


──…いってぇな!



聞こえてる声は
どれも胸を締め付けるものばかり。

止めなきゃ……でも体が動かない。


───…ブゥゥーン、ブルルルンッ、ブルルルンッ


大戦乱の中、聞こえてきたのは大きなバイクの音。

その音に喧嘩を中断し、皆がバイクに視線を向けた。



「誰だよ…って総長!?」


「なんでこんなところに…っ!?」



あたしもその光景を見ていた。

それは確かに
あたしの大好きな人…赤羽慶だった。